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あるインターナショナルデザイナーへのインタビュー

「日本人デザイナーの将来性と課題」

by 齋藤セシリアかおる

港を拠点に、世界規模で活躍する日本人デザイナーとのインタビューの中で、日本人デザイナーに見過ごされている課題、問題点=つまり、日本でデザインを学ぶ姿勢、教育プログラム、デザインの現場での在り方を見直す必要性、デザイナー志望者が取り組むべき課題、あらためて浮き彫りとなりました。

これは、桑沢デザイン研究所の創立メンバー、彫刻家 佐藤忠良(私の直接学んだ先生)が、「子どもたちが危ない」というの本に記された、感性教育の在り方に対し危惧していたこと、そのものでした。

デザイナーK氏曰く

「日本人デザイナーは、海外の大手メーカーに雇われた場合、およそ一年で 大半がファイヤーされる … 何故なら、彼らは、細分化されたデザインの専門的一部分野、パーツを形にする以外には興味を持たない、あるいは持てない。それは、つまり、全体の中の部分的な仕事しか出来ない、やらないということ。

また、コミュニケーション力を磨いておらず、強いチームワークを創ることや、他者を認めることが出来ない。そして自国のやり方を通そうとし、全体を見渡すことが出来ない…それがファイヤーされる理由となっている。」

 

手堅く生きようとする日本的価値観に押し込められたデザイナーではなく、今この21世紀に、世界的に求められているデザイナーとは、それとは真逆な人。それは、デザインの本質を熟知しつつ感性を研ぎ澄まし、チャレンジすることを楽しめる、そんな人なのではないだろうか。

◯日本におけるデザインの現場と、教育プログラムに関連する同質の課題

上のような現実がある中、日本のデザインの現場やデザインの学び方はこのままでよいのか? 変えるとしたら、何を変えればよいのか?
しかしながら、この問題は、本当を言えば、いわゆるデザインの分野だけでなく、今の日本社会全体、教育プログラムを創る価値観と、創りだされる社会の全てのシステムに関わっているのではないだろうか。

世界のあらゆるモノコトはデザインによって創造される。

今 デザインを学ぶ者は、デザインの何に気づき、どのように改善し、良きモノを産みだす準備をすればよいのだろうか。

その答えは、実は、ごく身近なところにある、とArtlosophyは捉えている

● 日本の教育の現場とデザインの分業化が創りだす問題点

業化を進めているデザイン教育や企業のデザインの現場では、一体どんな問題が起きているのだろう。これが教育プログラムとビジネスにおける目的の設定に端を発していると気づき、プログラムの改変の必要性を感じている方はどのくらい、いるのだろうか。

モノコトづくりで、分業化が当たり前になると、物事を統合的、全体的に捉えられるデザイナーの絶対数が減り、統合的デザイン思考が習慣から見落とされる。

デザインにおいて最も大切な、「全体と部分、周辺と周辺、等、関わる要素の関係性を捉える統合的発想」が、最初に意識されるべきだが、それが意識的にデザイン業務の過程に用意されていないのである。

へたすると全体像が観えないうちに、ある部分だけのデザインを任せられ、それでよしとされる現場。今 日本では、即戦力をつけるための記憶重視、ノウハウに基づいた教育プログラムが、大変残念なことに、幼稚園からすでに、始まっている。

そこには、日本人特有の魅力ある創造性や感性を培うことを目的としたプログラムが極端に少ない。

それよりも、安易な海外の手法を真似することに始まり、すでにやり方が示されている方法をどれだけ沢山学びこなし覚え、いかに失敗を減らし、上手くみんなと同じように出来るようになるか、というプログラムなのだ。しかし、私たちの社会が真に必要としているデザインを生み出すのは、感じる力、感性が磨かれた、自分の感覚、想像力、創造性を駆使できる力を持ったデザイナーである。

そのようなデザイナーこそが、魅力あるデザインを輩出しているのは世界をみれば明らかだし、日本でも活躍してきたデザイナーたちの哲学を聴けば一目瞭然ではないだろうか。

●感性を磨くには何をしたらよいのか?

ず感性をいかに定義するか明確にしたい。Artlosophyでは一貫して、感性を次のように定義している。

感性とは:感覚と知性を統合した個人の総合力である。

そして、感性を研ぎ澄ますために、まずは観察、つぎに問いかける力、それから共感力、 全てを見通す達観力と位置付けている。それが、自分独自の視点、個性、特質を形にする実現力を育むからだ。

デザインに直接的に必要となる、全体と未来を見渡せるビジョンの下地となる想像力や創造性には、少し想像しただけでも、それだけの課題が隠れているのだ。

今回の特別講座は、この、デザインの底力を支えている想像力、創造性を育むきっかけとしての、コンセプトやテーマを練り上げ、より高いレベルのデザインに必要な、自分オリジナルなデザイン思考哲学に昇華させる、「問いかけるチカラ」を育むための、理論と実践を体験する場を用意します。

●講座のテーマに侘び寂びとモダニズムを選んだ理由

見して 若者には無縁そうに見える、侘び寂びは、世界的なデザイナーや、建築家がポストモダンとしての方向性を見出してくれるのではないかと魅了してやまない、日本特有の哲学だ。何故、ポストモダン以降を支えるコンセプトか?と言われて 専門家の研究対象になっているのか。また、社会に向けて生み出す必要のあるデザインに必要な普遍性につながるモダニズムについて、との対比、重なる部分はどこにあるのか、それが実際におけるデザイン業務にどのようにかかわっていくのか。

これらの、一見して交わり難いコンセプトの接点を探りながら、全体と個人である自分のバランスをとりながら、デザインに結びつけるには何が必要なのか? 侘び寂びとモダニズムの対比をたたき台に、自身の問いかける姿勢を感覚的に体感し、それが、デザイン思考の基礎の中の基礎と言える、 想像力が創造性に結びつく瞬間を、感じ取り、日常の過ごし方を変える一旦になってもらえたらな、と願っている。

この特別講座で垣間見た、自分の内面に用意されている哲学的思考力に気づくことが、やがて、自分が将来手がけたいと願うデザインの分野を見極め、深め、拡げ、デザインを取り巻く全体を見渡せるデザイナーへの道を自ら切り開けるようになる礎、きっかけになればと。

齋藤セシリアかおる Artist/ Designer
感性教育研究Artlosophy エジュケーションfounder 

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